米選びで重要なお米の指標を詳しく解説【後編】

お米のおいしさの指標

編集部より:普段ご家庭や飲食店で使用しているお米の品種、何となくで決めていませんか? 今回は五ッ星お米マイスターの平松伸元さんにお米の指標について伺いました。お米には美味しさを測るための指標が用途別にたくさんあります。それぞれの役割と見分け方を知って、あなた好みの最適なお米を見つけてみましょう。

前回の記事(詳説!誰でもわかる正しいお米の選び方【前編】)では、米選びのための重要な指標である、お米の旨味、粘りと弾力、粒ぞろいについて説明しました。後編では、米選びのための他の基準を説明します。

お米の粒の大きさについて

写真は巨大なかぼちゃです。圧巻の大きさですよね。アトランティックジャイアントという品種で、数百kgに達することが可能であり、現在の世界記録は1,025kgだそうです。

これは、品種の遺伝的要素と、生育環境との相互作用で実現されています。巨大かぼちゃを作る際は、ツルや葉を広げるのに十分な土地を用意して、1つの株に1つの実だけにして育てるそうです。

お米の大きさもまた、品種と生育環境が影響します。さらに、通常、お米は収穫後玄米の状態で網でふるい、未熟な実や小さめの実を取り除きます。この網の目の大きさによって、出来上がってくる製品の大きさも変わります。

したがって、お米の粒の大きさには品種、生育環境、選別の3つの要因があります。

粒の大きいお米の生育環境

最近のお米は「粒張りが悪い」と表現されることがあります。これは、お米の粒の横幅――胴回りが細いということです。粒張りを良くするために、密植(苗と苗の間が狭かったり1株の苗の本数が多かったりすること)を避けるなど、様々な農家さんの技術や努力が行われています。

粒の大きいお米の品種

「コシヒカリ」は小粒なものの、縦より横幅が長く、ずん胴です。いずれにしても、ご飯にしては少し小さめです。粒が大きいお米として昔から有名なのは、岐阜県の「ハツシモ」や、岡山県の「朝日」です。2000年に生まれた岐阜県の「龍の瞳」は、大粒でおいしい超高級米です。

粒の大きいお米の選別

品種により使用する網目の大きさは異なりますが、比較的小粒の品種であるコシヒカリは通常1.85mmが使用されます。高級米として知られる魚沼産コシヒカリは、1.90mmを品質条件としています。

粒の大きさは料理の噛み応えに大きく影響します。料理の種類によっては、大粒なお米は美味しさをさらに引き立たせる要因になるでしょう。

お米の香りについて

ご飯が炊きあがるときの香りってすごくいいですよね。今では予約で炊飯することが大半ですので炊飯器に着きっきりではありませんが、昔のかまどだったら火加減もあるので着きっきりでご飯の炊きあがる香りを楽しんでいたと思います。

一方で、炊きあがった後のごはんから強い香りがすることはありません。また、古米になるとヌカの油分が酸化して好ましくない臭いがお米に発生してきます。昔は低温で保管する倉庫設備がなかったため夏を越してきたころにはかなり古米臭がでてきていました。古米臭のあるお米は炊いている時も臭いがします。

香りといえば、お米自体に香りのある「香り米」というのがあります。日本では高知県で香り米を普通のお米に混ぜて炊く風習が昔からあります。また、インドでは王族がそれぞれ香りのあるお米を持つと言われている、「バスマティー」という品種があります。

以前、インドカレーをバスマティーで食べようと炊き方を工夫したことがありました。炊いている時の臭いがきつかったのですが、何度も繰り返しおいしく炊ける工夫をしているうちに、炊いている香りも芳しいと思うようになりました。

お米のツヤについて

お米のツヤは視覚的要素ですが、これもまたおいしさの指標の一つです。一目見た時にごはんがピカピカ輝いていたら、それだけで美味しそうに見えますよね。

ごはんを炊いたとき、炊飯器の内釜の上部に薄いノリのような膜がついているのをご存知ですか?一般的には使われている言葉ではありませんが、業界内ではこれを「おねば」と呼んでいます。言葉の通り、粘りの強いお米ほど、おねばは炊飯中にたくさん発生します。ミルキークイーンやゆめぴりかなど、アミロース値の低い(粘りの強い)品種のお米をあなたが好きだと思うお米に少しブレンドすると、ピカピカの炊きあがりになります。

お米の品種以外にも、ツヤに影響を与える要因があります。精米して日数が経ち、白米が酸化することによりツヤが失われてしまう事があります。古いお米を研ぐときは、数回ヌカを落としたら水を切り、お米を少し強く両手で揉むようにして擦り合わせ、お米の表面を削り落とすような感覚で研いでください。特に無洗米の炊きあがりにツヤがないと思ったら、無洗米だとしてもシッカリと擦って研いでみてください。

冷めてからの美味しさについて

家庭用の炊飯器には保温機能がついていますが、保温ができないお弁当などでは、冷めても美味しいお米が重要です。

「冷めてから美味しいのが良いお米」と聞くことがよくあります。確かに、良くないお米は冷めたらあまり美味しくありません。(炊き方ではなく)お米自体の影響によって冷めた時のおいしさを左右する要因は、主に3つあります。

  1. 品種
  2. 生産技術
  3. 精米製法

ここでは品種と精米製法について、詳しく説明します。

冷めても美味しいお米の品種

ごはんを炊いたとき、「おねば」と呼ばれる薄い糊のような膜が発生します。これが保湿膜として機能し、冷めても硬くなりにくく、長時間美味しさを保つことができます。ミルキークイーンやゆめぴりかなど、アミロース値の低い(粘りの強い)品種ほど、おねばはたくさん発生します。

ちなみに、ごはんは冷めた後から味の違いがはっきりと出てきます。品種によって、冷めた時の味の濃さや味や風味に違いがあります。

冷めても美味しいお米の精米製法

イラストは玄米の断面図です。これを見ると、白米とヌカ層の間に、うまみ層という有用な層があります。うまみ層には甘みや旨みがあり、さらに、有用な栄養価があることが明らかにされています。お米のみならず、果物など実になるものは、皮と実の間に甘い層があると言われています。

このうまみ層は、炊飯の際にたくさんの水を吸収し、炊きあがったときにご飯の外側にたくさんの水分を有する保湿膜となります。精米時にうまみ層を残しておくと、保湿膜がうまく作用し、お弁当などで冷めたお米が硬くなりにくくなります。

保温適正について

2度目の食事の際の保温ごはんはとても残念ですよね。仮に毎回二回分のご飯を炊いているとすると、一生の内の半分があまり美味しくないごはんを食べていることになります。これって残念なことじゃないですか? できれば毎食炊くのがいいですが、難しい場合はお米の保温適正を重要視されてみませんか。家庭でもお店でも、「いつ食べてもおいしいごはん」は重要なお米選びの指標です。

飲食店様に食材全般を卸されている販売店様から「新しく獲得したイタリアン店のお客様が、たくさんごはんを使わないせいで、保温して臭くなったごはんを廃棄してしまうのがもったいない」という話を聞いたことがあります。飲食店様の場合、閉店近いのにごはんが足りなくなりそうで、追加で炊いたら余ってしまい、翌日まで保温することもよくあると思います。

そこで、保温してもすぐに黄ばんだり、臭いが出てこなくするご飯の品種と炊き方をご紹介します。

①品種

最近の品種では「つや姫」が圧倒的に保温適正が高く、炊き上がりも真っ白です。半日ぐらい保温しても炊き立てに近い白さを保ち、臭いも出てきにくいことで知られます。「コシヒカリ」も保温に強いですが、特に新潟コシヒカリに保温適正が高いものがあります。

②炊き方

炊き方は大きく2つのポイントがあります。

まず、きちんとお米を研ぐことです。ヌカが残っていると劣化が早くなります。無洗米が黄ばむ場合は少し研ぎ洗いしてください

次に、漬け置き時間を守ることです。研いでからすぐに炊いたり30分以内に炊飯をすると炊きあがりから黄色く保温するとパサつきがすぐに起こってきます。特にガス炊飯器の場合は最低30分は漬け置きしてください。保温時間が毎回長くなってしまうなら、漬け置きした後、炊飯開始する前に新しい水(できれば浄水)にかえて炊くことで、より保温に強くなります。


さて、「詳説!誰でもわかる正しいお米の選び方」では、2回に渡ってお米の指標について詳しく説明してきました。お米は主食でありながら「嗜好品」であり、自分好みのお米を見出すことが「一生の食を豊かにする」ことであると思います。

なお、前編の記事は以下のリンクからご覧いただけます。

詳説!誰でもわかる正しいお米の選び方 前編

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