編集部より:近年では食品に虫が混入することは殆どありませんが、お米には米の虫が必ず発生します。米屋からすると、米の虫を100%駆除することは不可能だそうです。本日は五ッ星お米マイスターの平松伸元さんに夏場の炊飯の注意点と、米の虫の発生原因について伺いました。
目次
お米に沸いてしまう虫
コクゾウムシについて
米の虫がお米の中から出てくる、という話がありますよね。これは実際に起こり得る現象です。証拠写真は閲覧注意のため割愛しますが、この現象こそが、開封したお米に虫が混入している原因になります。
イラストはコクゾウムシと呼ばれるお米の虫です。コクゾウムシはまさにお米をたべる虫。この虫が発生したお米は、夜中静かになったとき、お米を齧る音がミシミシと聞こえてきます。また、この虫はお米の中心に卵を産み付けます。孵化した幼虫はお米の中でお米を食べて育ち、やがて成虫となってお米から脱出してきます。このため、製品として出来上がったときにはコクゾウムシがいなくても、お客様に届いた時や保管中に発生することがあります。
ノシメマダラメイガについて
ノシメマダラメイガは、白いお米をガリガリするというよりは、お米のヌカやヌカ層、胚芽の部分を好みます。また、お米以外に小麦粉やチョコレート、クッキーなど油分の多い加工食品インスタントラーメン、ペットフード、ドライフラワーにも発生します。このように、様々な食品が餌となるのでどんどん増えてしまいます。発生したお米を捨てたらいなくなるというわけでもないのが厄介です。5月から10月までがよく発生する時期です。食べても害はありませんが、放置しておくとどんどん増えます。
幼虫は白いイモムシのような外見です。この幼虫はものすごい力を持ち、お米の袋ぐらいなら余裕で穴を開けます。そして、冬の間は幼虫で越冬します。たとえば段ボールが良い住処です。
幼虫はこの波々の空間に入り込みます。段ボールは暖かく、越冬には適した空間と言えます。
また、メイガの卵はとても小さくて白く、
精米ラインでは卵を完全には除去できません。このため、製品に卵が入っていた場合、お店で販売中やご購入後、幼虫となって発生してます。
コクヌストモドキについて
コクヌストモドキは白いお米ををガリガリするというより、お米のヌカなどの粉っぽいものを好みます。また、お米以外にも小麦、シリアル、パスタ、ビスケット、豆、ナッツ等、乾物の貯蔵できる食品に発生します。
羽があるので飛翔能力もあり、外部から侵入してくる可能性もあり得ます。食物倉庫などを持たれている場合はこの虫の発生に気を付けてください。
長くて3年程度も生きることもあり、段ボールや材木等で越冬します。食品倉庫で段ボールや材木(パレットも)を何年も置かれていたりする場合は、一度確認したり、新しいものに交換したり、素材をプラスティックのものに変えたりしてみましょう。
色彩選別機の内部写真
もともとは原料に卵が混入していたり、外部からの飛翔で、精米工場のヌカが溜まっているところに棲み付きます。ヌカが溜まっている場所は設備の死角になることが多いので注意が必要です。その部分の清掃が不十分であった場合、そこで繁殖した虫の卵が製品に混入します。卵は異物除去機でも選別が難しく、製品になってしまうことがあります。
幼虫はすごく小さくて細いので目立たず、成虫になってから発覚するケースが多いです。もし発見したら、食品保管庫や長期保管している乾物を疑ってみましょう。
さて、次のページでは、夏場の炊飯の注意点と、米の虫の発生原因について解説します。
米の虫の発生原因
理由1.加工を行っていない
お米が一般的な食品のように虫を発生させないようにできないのには、もちろん理由があります。
まず、加工を行っていないほとんどの食品は、粉にしたり、火をかけて調理していたり、何らかの加工を行っています。この工程により、虫を除去したり、虫の卵を死滅させたりしています。一方、お米は精米はするものの、これらの加工は行いません。このため、どうしても虫が残存することがあります。
理由2.長期保管をする
虫が付きにくい桐の米びつ
次に、長期保管をするお米には賞味期限がないという点が挙げられます。お米は常温でも長期間保管することができます。長期保存しても、食味劣化は起こるものの食べられなくなることはないのです。一方、長期保管することから、これを餌とする虫も存在します。常温での長期保管では、これらの虫が発生する可能性が高まります。以上のことから、昔は夏にお米に虫が湧くのは当たり前でした。
現代の保管方法
色彩選別機の内部写真
ここまで、お米に虫が湧きやすい理由を説明しましたが、今では発生するときもあるものの、昔ほど頻繁に発生しなくなりました。
今と昔では、お米の保存方法に違いがあります。お米を15℃以下で保管することで、虫は冬眠状態になり動かなくなります。すると、虫が卵を産むことはなく、それ以上増えることはなくなります。冬眠した虫が原料のお米に入っていたとしても、製品になる前の精米時に色彩選別機で取り除かれます。
大半のお米はこのようにして低温保管されていますが、農家さんで夏まで常温で保管したお米や、精米工場で夏場長期間常温保管したお米には虫が発生します。その虫たちが卵を産むと厄介なことになることもあります。
家庭での保管方法
写真のような西日の当たる場所には、お米を置かないようにしましょう。
お米は加工をしないことにより、虫や虫の卵を死滅させることができず、また長期間保管することにより、虫が発生する可能性を0にできません。このことを踏まえ、お店や家庭でも夏場の長期間の保管はなるべく控えましょう。保存期間の目安としては5月以降、新米までは精米日より1ヶ月以内に使い切るとよいでしょう。
家庭用のお米の詳しい保管方法は以下の記事で解説しています。
業務用のお米の詳しい保管方法は以下の記事で解説しています。
お米の虫については以下の記事がおすすめです。
夏場の炊飯時の注意点については以下のページにまとめました。